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23.施設生活の疑問-日課・規則

施設生活の大きな課題は、入浴や食事に代表されるように「時間に決められた行動」をしなければならないことです。業務を円滑に行うため、ご利用者の生活スケジュールや職員の業務分担があらかじめ決められている日課です。
私は以前から、「施設の日課というお化けを崩さないと、良いケアはできない」と言い続けてきました。施設側は限られた人数で、ケアをするので効率を求めますが、ご利用者それぞれが違う人生を歩み、生活のリズムやこだわりも違うのに、同じ日課で生活を強いることは無理があります。
障害の程度や日々の体調、行いたいことも違います。日課に縛られたケアは、個人の生活を考えるより、集団の維持と業務の円滑な遂行に主眼が置かれがちです。入浴だったら、決められた時間内にいかに効率的にお風呂に入れるかが目的化します。そこには、お風呂に入る主体者としてのご利用者の気持ちは欠落しています。
例えば、「今日は何もなくて良かったね」といった夕方の職員の会話は、何もなくて本当に良いのでしょうか。大勢の人が生活していれば、日々さまざまな泣き笑いや人間関係のトラブルなどがあり、何もないことの方が異常だと思いませんか。
また、業務を円滑に進めようと、いろんな規則が作られます。例えば、認知症の人で他人の衣類を持っていったりする人(泥棒ではありません。区別がつきにくく間違ってしまっているだけ)がいますと、職員がご利用者の衣類を一括して管理する規則を作ってしまいがちです。これでは、お一人お一人の人生と思いに寄り添ったケアを目指すことができません。
ご利用者と職員は施設に入居することで出会い、浅い関係から時間をかけて信頼を重ね、深い関係になることが求められます。しかし、日課と規則に縛られたケアでは、そんな関係を築くことができません。日課と規則をなくし、ご利用者と職員が、ゆっくり時間を過ごせる施設がいいですね。