厚生労働省は2025年には認知症の人が700万人に達するとの推計を出しています。65歳以上の5人に1人に当たります。若い人の認知症も増加しており、30代、40代で発症される方もいます。私たちは認知症を自分自身のこととして認識して、考えていく必要があります。
国は、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)を作成しました。
基本的考え方として、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で、自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」「認知症の人を単なる支える人ではなく、認知症の人が認知症とともによりよく生きていけるような環境整備が必要」と掲げています。認知症の人を、援助を受けるだけの存在から、生活の主体者として位置付けたことは大変に意味深いと思います。
新オレンジプランに大きな影響を与えた動きとして、認知症の人ご本人たちの活躍があります。2014年10月、「認知症になってから希望と尊厳をもって暮らし続けることができ、よりよく生きていく社会を作り出していくこと」(設立趣意書より)を目的として、「日本認知症ワーキンググループ」が発足しました。認知症の当事者として社会へ発信を始めたことは画期的であり、初めてのことだと思います。メンバーの皆さんはその後、総理大臣や厚生労働大臣らと会談し、政策提言し、さまざまな学会やマスコミ、市民への講演会などで自身の言葉で体験を語っています。
これまでは周囲が認知症の人の気持ちを推し量って課題を解決していこうとしていましたが、ご本人の声に耳を傾け、ご本人と相談しながら取り組んでいくことが求められています。認知症の当事者がおっしゃっている「私たち抜きに、私たちのことを決めないで」という言葉を、しっかり胸に留めていきたいと思います。