2000年にスタートした介護保険制度は「介護の社会化」を、理念のひとつにしています。しかし現場では、常に「家庭の介護力」を前提に介護サービスが提供されています。ここに大きな課題が潜んでいます。その過程を取り巻く現状を少し見てみましょう。
まずは、家族の少人数化高齢者のみの世帯の急増が急増しています。
国民生活基礎調査によると、高齢者が属している世帯は、1989年は単身世帯13.1%、夫婦のみの世帯18.2%、3世代世帯44.8%でしたが、2013年は単身世帯25.6%、夫婦のみの世帯31.1%、3世代世帯13.2%となっています。単身と高齢者のみの世帯が増えています。
介護者の年齢も60代から70代が中心になり、いわゆる「老老介護」で代わりの人がいない中で介護が行われています。
一人で複数人を介護したり、家族として多様な役割を担う必要も出ています。長男長女同市の結婚が多数を占める中、その両親は4人おり、その年令が近いため、介護問題は重くのしかかってきます。平均寿命が長くなる中で、女性なら、妻・娘・嫁・姑(しゅうとめ)の立場を同時に行わなければならないなど、1人の人が家庭や社会で様々な役割を担っています。
介護保険が始まって16年、サービスは飛躍的に増えましたが、上記のように、家庭介護を取り巻く環境はこのように厳しくなっています。しかし、「家族だから介護しなければいけない」は、無言の圧力として、現在も迫ってきます。介護したくないのではなく、介護できない現実があるのです。
周囲の人は、それをわかって家族とお付き合いしていきたいものです。私は、この仕事を始めてから、介護者に「がんばってください」とは絶対に言いません。頑張らなくていいんです。私たちを使って下さい。